先月博多で宿泊したホテルは、十数年前の年末年始にも泊まった処だった。その時のことをときどき思い出す。当時、一人で正月を過ごすつまらなさから旅に出ることにしていた。ただ、ホテルに泊まったとしてもやることは同じだった。当時ハマっていた海外のコメディドラマのDVDをコンピューターで見、飽きたら街を散策した。歴史ある
地の正月は商店街をはじめデパートも閉まっている。人影もない。白猫が一匹いたくらいだ。大気が澄み、静かな正月が清々と広がっていた。そこには馴染むどころか受け入れられる雰囲気はどこにもなかった。仕方なく部屋にもどりまたDVDを見た。正月にホテルに投宿しての楽しみは朝食におせち料理がでることだ。豪華で正月が華やぐ。獅子舞も登場したホテルもあった。仲居さん達が着物姿で、そろって新年の挨拶をしてくれ、こちらも返す。目出度さが形になる。独り家にいては生まれない新年の寿ぎ気分だ。その頃の自分はすべてに飽いていた。時の流れや明日の存在に途方に暮れ、ただ在った。確か正月の2日か3日の真夜中だった。寝ぼけていたのか、はっと飛び起きた。酔っていたのではない。その頃酒とのつきあいはなかった。だから、そのことは間違いのない現象だった。